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【7. 不動産投資の利回りについて】の口コミ情報

「不動産投資」に限らず、株式投資などでも投資行動の状況判断、評価、次の行動方針を定めるのに日経平均やTOPIX、為替水準などいくつかの経済指標を参考にします。不動産投資の収益率の高さを見る指標のひとつに「利回り〇%」という言葉がよく使われます。この利回りとは、不動産投資額に対する年間収益の割合のことです。投資額に対してどのくらいのリターン(収益)が得られるのかを表す指標で「表面利回り(グロス利回り)」を使います。収益性を把握するのに便利な指標ですが、表面利回りの数値だけを当てにするのではなく、運用経費を意識した「実質利回り(ネット利回り)」も算出・確認します。指標に依存するのではなく数値の意味を考えたり、絞り込みのヒントに使うのがいいとされます。

「表面利回り」、「実質利回り」2つの指標

利回りは、不動産投資額に対する年間収益の割合のことで、投資額に対してどのくらいのリターン(収益)が得られるのかを表す指標です。

「不動産投資」における利回りには2つの計算方法があります。
[表面利回り(グロス利回り)]

表面利回りは、年間の家賃収入の総額を物件価格で割った数字です。
投資物件を紹介する際などには、一般的に表面利回りが使われます。なぜなら、不確定な司法書士報酬や年度によって変動する可能性のある諸経費をあらかじめ算定することはできないからです(「不動産投資」の経費については【5. 不動産投資でかかる経費について】を参照ください)。その意味では諸条件や経費を算定しない分、紛れもなく算定しやすい指標ということができます。その大掴みのザックリ感からも、あまり当てにし過ぎてはいけないという注記が付されてきます。

 表面利回り(%)=年間家賃収入÷物件価格×100

【5. 不動産投資でかかる経費について】

[実質利回り(ネット利回り)]

実質利回りは、年間の家賃収入から諸経費(管理費・修繕積立金、固定資産税など)を差し引いた実質的な収益から、物件価格に購入時の諸経費(都市計画税、登記費用、印紙代、不動産仲介手数料など)を加算したもので割った数字です。

 実質利回り(%)=(年間家賃収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100


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2つの利回りの違いを比較

(1)「表面利回り」

「表面利回り」と「実質利回り」、2つの利回りの違いを例示から比較してみることにしましょう。
例えば【A物件】と【B物件】の2物件の比較に「表面利回り」と「実質利回り」、2つの利回りを用いて検討してみるという場面です。

  【A物件】 物件価格(税込) 1500万円  想定家賃月額 7万円

  【B物件】 物件価格(税込) 4000万円  想定家賃月額 15万円

2つの物件の[表面利回り]の計算式は次のとおりです。
  【A物件】の表面利回り
 年間家賃収入 7万円×12ヵ月 ÷ 物件価格1500万円 = 0.056(5.6%)

  【B物件】の表面利回り  
 年間家賃収入15万円×12ヵ月 ÷ 物件価格4000万円 = 0.045(4.5%)

「表面利回り」からは、【A物件】のほうが利回りが高く表面的には大きな収益が得られそうなことが示されました。

(2)「実質利回り」

次に2つの物件の[実質利回り]の計算式は上にも記しましたが次のとおりです。

 実質利回り(%)=(年間家賃収入-諸経費)÷(物件価格+購入時の諸経費)×100

この【A物件】と【B物件】の2物件の諸経費や購入時初期経費は以下の支出になっています。
  【A物件】の諸経費
管理費+修繕積立金月額=3.5万円、固定資産税=5万円、不動産仲介手数料年間=12万円、購入時諸経費=50万円

  【B物件】の諸経費
管理費+修繕積立金月額=2万円、固定資産税=9万円、不動産仲介手数料年間=6万円、購入時諸経費=100万円

これらの諸経費を織り込んだ実質利回りを計算してみます。

  【A物件】の実質利回り
 (年間家賃収入 7万円×12ヵ月-年間諸経費3.5万円×12ヵ月-5万円-12万円) ÷ (物件価格1500万円+購入時諸経費+50万円) = 0.016(1.6%)

  【B物件】の実質利回り  
 (年間家賃収入15万円×12ヵ月-年間諸経費2万円×12ヵ月-9万円-6万円) ÷ (物件価格4000万円+購入時諸経費=100万円) = 0.034(3.4%)

「実質利回り」からは、【B物件】のほうが利回りが高く運用から手元に残る収益金額が多くなり有利なことが示されました。

(3)補足:突発的なコストもあり

「表面利回り」、「実質利回り」2つの指標を確認してきました。ともに「不動産投資」を判断したり評価したりするための目じるしに過ぎない点に注意が必要です。
表面利回りや実質利回りの計算式で気づくのは年間家賃収入に空室リスクは織り込まれていないじゃないか、給湯器やエアコンの故障で想定外の修理費だって発生するかもしれないじゃないか……。そのとおりで、とてもアバウトな目安にすぎないのです。

それでも不動産投資の話題のなかで単に「利回り」といわれたときは「表面利回り」を指して用いられます。
そのことから「利回りの高い良い物件」というような話しになった際、じゃあ、その物件の「実質利回り」はどうだろう? 駅近で買い物にも便利なロケーションで、確かに年間を通じて満室状態を保てそうな物件なのか……。
あるいは同一エリアの類似物件の家賃相場を賃貸仲介サイトから入手して、家賃を比較してディスカウントされていないか(利回りの高さは物件価格が安いだけの嵩増しではないか、逆に本当に掘り出し物の物件なのか、など)そのように物件点検やら選別の気づきに繋がっていく手がかり指標になると私、佐藤は見ています。

表面利回り活用の目安として、都内人気エリアの駅近1Rマンション物件なら家賃がしっかり確保できる反面、好ロケーションのハイグレード設備など物件価格もそれ相応に高くなるのが当然です。そこから表面利回り3~3.5%の物件なら、入居者様から支持を集める競争力を備えた収益用物件としておすすめできると自分は考えています。

イールドギャップからの検討

「利回り」指標の活用で、物件選別基準にイールドギャップを考慮するという方法も考えられます。
「不動産投資」を金融機関の他人資本でレバレッジを効かせて行うとき、その不動産投資ローンの金利を実質利回りと比べて、どの程度金利差があるのかを比べて物件購入の可否を決めるという検討もできます。

「実質利回り」=おおまかな投資利回りと、不動産投資ローンの借入金利の差をイールドギャップといいます。
一般的にイールドギャップの適切値は3%以上、不動産投資ローンの融資金利に比べてどれくらい実質利回りが大きいかが要点ですから、イールドギャップは大きい数値であるほど有効となります。

3つ目の指標は「還元利回り」

「還元利回り(キャップレート)」は、不動産の収益性を表した利率のことで、物件価格(税込)を算出する時に用いられます。

投資対象として検討している物件の適正な不動産価格を知りたい場合、不動産鑑定士に鑑定評価(査定)=デュー・デリジェンスを依頼します。その時、不動産鑑定士が物件価格を求めるために使うのが、この「還元利回り」の利率です。

  [収益還元法(直接還元法)で物件価格を求める計算式]
物件価格 = 1年間の利益(家賃収入-経費) ÷ 還元利回り(%)

この計算式で使われる利率が、「還元利回り」です。還元利回りの目安は、立地や築年数によって違いが出ますが賃貸用住宅なら5~8%程度、事業用なら7~10%程度とされます。

例えば還元利回り6%を見込めるマンションがあった場合、1年間の予想利益が1200万円なら、適正価格は1200万円÷6%=2億円になります。
還元利回りと1年間の予想利益がわかれば、不動産の物件価格の適正金額を求めることができます。

上記の収益還元法(直接還元法)で物件価格を求める計算式を変形して次の計算式から還元利回り(%)を算出することもできそうです。確かに、不動産価格と1年間の利益がわかれば逆に還元利回り(%)を算定可能です。

還元利回り(%) =  1年間の利益(家賃収入-経費)÷ 物件価格×100
1200万円 ÷ 2億円 ×100 =6%

この計算式で「還元利回り」は、投資額に対する年間の利益の割合、つまり不動産の収益性を表した利率を表すことがよくわかってくるように思います。

「還元利回り」は、投資した金額の回収に何年必要かという指標にもなります。例えば、還元利回りが6%なら16.6年で投資金額を回収できますが、5%なら20年、4%なら25年かかって回収することがわかります。

「還元利回り」の目安は5~8%

物件ごとに条件は異なってきますが、地域別の「還元利回り」の目安はインターネットで調べることができます。
共同住宅(店舗・事務所との併用を含む)の地域別の還元利回り(全築年のみ抜粋)を掲載します。参考になると思います。
また築年数区分ごとのキャップレートや鑑定評価額3億円以上の指標の掲載もあるので、「評価先例(令和2年4月から令和3年3月)の地域別・築年数別平均還元利回り」の元データを閲覧することもおすすめです。

【地域】   【還元利回り】
 全国      5.9%
都心5区      4.2%
都心周辺区    6.5%
多摩核都市    6.2%
神奈川東京周辺市 5.7%
埼玉東京周辺市  5.4%
千葉東京周辺市  6.2%
他人口10万都市  7.5%
その他地域    8.5%

評価先例(令和2年4月から令和3年3月)の地域別・築年数別平均還元利回りダウンロード