いい「不動産投資ローン」は金利が低く借入れ期間も長いなどメガバンクや大手銀行の融資なのでしょうが、審査が厳しく融資実現可能性は低くなります。自分の状況と無理のない条件で利用でき、かつ「不動産投資ローン」に積極的な信販系の金融機関などが有力になってくると思います。
「不動産投資ローン」を組める金融機関の種類
「不動産投資ローン」の融資を受けられる金融機関は、全国に展開するメガバンク(大手都市銀行)から地方銀行、信用金庫・信用組合、ノンバンク、店舗を構えないネット銀行までさまざまあります。当然、金融機関ごとに金利や審査方法が異なってくるため、ローンが組めそうな自分に適した金融機関を選んで不動産投資ローンを組むことになります。
また「不動産投資」のために物件購入を決めた不動産会社ごとに提携金融機関があります。物件を仲介してくれて親しくなった担当の営業マン(不動産コンシェルジュ、不動産コンサルタント)なら、取得する物件概要もよく把握しているうえ、顧客であるオーナー様それぞれのライフプラン、賃貸運用への要望、資金事情などもこれまでにヒアリングして理解していることから、どの「不動産投資ローン」を組むかについても提案をしてくれるはずです。
それでも「不動産投資ローン」についてある程度の知識を事前に持っておくことは、運用期間が中長期になる不動産投資に対して一定の安心感を与えてくれると思います。収益物件という資産を獲得できますが、自己資金と異なる「不動産投資ローン」の融資は借金ということになります。不安は少しでも抑えておきたいですし、未知でいるよりは知っている、あるいは知ろうとして学ぶことで不安感をなだめることができそうです。
「不動産投資ローン」には2種類ある
「不動産投資ローン」には、「アパート・マンションローン」と「プロパーローン」の2種類があります。それぞれ融資の条件や借入額の上限が異なります。
「アパート・マンションローン」
あらかじめ設定された融資条件や審査基準を満たすことで、融資を認められるのが「アパート・マンションローン」です。
物件や借入者(投資家)によって審査基準が変わらないのが特徴です。融資条件に一致するかどうかで判断するので、結果が出るまでの期間が短い傾向があります。すでに出来上がっているパッケージサービスや既製品に似たイメージの融資です。
借入額の上限は多くの場合、借入者の年収を基準に設定されます。一般的には年収の7倍~8倍が目安で、年収800万円の方であれば5600万円~6400万円が上限です。審査基準を把握しやすい一方、審査の結果は収入状況や属性に左右されます。
「プロパーローン」
融資条件や審査基準が決まっている「アパート・マンションローン」に対して、借入者(投資家)の資産や事業実績を見て融資を決めるのが「プロパーローン」です。複数の情報を考慮しながら審査を進めるため、結果が出るまでの期間が長くなる傾向があります。
一方、借入額の上限は引き上げやすいという特徴があります。実際の上限は借入者の状況によって変動しますが、1億円を上回る融資を受けられるケースもあります。審査期間にこだわらず、高額の融資を受けたいオーナー様に向いているローンになります。
また、保証会社の保証が必要ないので保証金はかかりませんが、保証人もしくは連帯保証人が必要です。
年収別「不動産投資ローン」を組める金融機関
「不動産投資ローン」を組める金融機関
【年収】 【金融機関の種類】
500万円以下 日本政策金融公庫、ノンバンク系、ネット銀行
500万円~1000万円 地方銀行、信用金庫、オリックス銀行
1000万円以上 メガバンク3行(三菱東京UFJ、三井住友、みずほ)
大手銀行(りそな銀行や信託銀行)
[日本政策金融公庫]
政府系の金融機関で、主に中小企業の支援や社会的に弱い立場の人を支援することを主な目的にしています。
年収が低い、雇用形態が正社員ではない、ほかの金融機関では厳しい審査をされる人にも融資をしてくれます。
(金利や諸条件の目安)
公共料金や税金に未納がない。金利:0%台~2%台。女性や若年層、高齢者を優遇。融資額:上限4800万円。借入期間:最長で20年。
[ノンバンク系]
銀行以外の金融機関になり、預金の受け入れを行わずに、お金を貸すなどの与信業務に特化した金融機関のことです。
融資審査基準が銀行などよりも緩い代わりに金利が高めに設定されています。
(金利や諸条件の目安)
金利:2.6%~5.9%。資金用途:自由。借入期間:最長で30年。
[ネット銀行]
ネットバンキングを専業で行う銀行です。 インターネット取引が業務の中心で、従来の銀行のようなリアル店舗を持っていないか、あっても少数に限られる銀行です。ネットで審査や契約が完結することが特徴になります。
(金利や諸条件の目安)
金利:2.95%~8.9%(変動金利)。借入期間:25年以内。収入:安定して継続した収入があること。保証委託手数料:借入金額×1.32%(消費税込)。融資事務取扱手数料:借入金額×0.88%(消費税込)。
[地方銀行]
地方銀行は地域に根ざした銀行のため、融資できるエリアが限られています。地方銀行は「地域を支える」役割を担うので、大手の金融機関が融資しない希望者にも独自基準で融資を行うなど、大手金融機関に比較して審査はやや緩い傾向にあります。
その代わり、借入者によって支店長面談を行ったり、過去に自行と取引(たとえば定期預金など)があったかなども重視されます。
(金利や諸条件の目安)
金利:2.35%(変動)。保証人が1名必要。団信加入がない場合は推定相続人1名以上の保証人が必要。手数料:11万円。全額繰り上げ返済:無料~3300円。
[信用金庫]
地域の事業者や個人が利用者・会員となって互いに地域の繁栄を図る、相互扶助を目的とした非営利の金融機関のことです。地方銀行よりも、さらに地域密着型で融資できるエリアは限定的です。融資審査の基準は地元の人を応援する意味合いから緩くなる傾向があります。地方銀行と同様に面談を経て融資を実行することが多いとされます。
(金利や諸条件の目安)
信用金庫の営業地域内に住所がある。営業地域内の事業者に勤務している。借入期間:最大25年。金利:2.475%住宅ローンの金利基準。連帯保証人:必要。全額繰り上げ返済:33000円(税込)。
[オリックス銀行]
オリックス銀行は不動産会社との太いパイプにより、「不動産投資ローン」を得意としている銀行です。リアルな店舗を持たないネット銀行あるいは信販系に分類されます。借入対象となる不動産の所在地は原則として首都圏・近畿圏・名古屋市・福岡市に限られます。
公式ホームページには掲載されていませんが、借入者が若年層のケースで試験的な融資期間45年という超長期の不動産投資ローンも行っています。また他所では融資が困難な築古物件にも融資の道を開くなど、他所で断られた案件でもオリックス銀行には相談してみたほうがいいとの定評があります。
(金利や諸条件の目安)
全部で3種類の金利があります。3年固定(固定金利期間特約付変動金利型):2.3%~3.3%。5年固定(同前の5年ver.):2.5%~3.5%。変動金利:2.675%~3.675%。
同一勤務先に3年以上勤務(自営業者は開業から3年以上)。前年度の税込年収が500万円以上。借入金額1.10%(消費税込)の取扱事務手数料。
[メガバンク、大手銀行]
メガバンクや大手金融機関は、借入れの審査ハードルが高くなります。例えば、最低でも1割の自己資金、できれば2~3割の自己資金の確保が条件になるようです。融資審査は厳しいですが、金利が低いなどメリットがあります。メガバンク、大手銀行の融資は地方銀行よりも審査が厳しいので、メガバンクで融資を受けて返済できているという実績が評価を高めて、次の融資につながりやすくなります。また支店数が多いので全国エリアをカバーしています。
(金利や諸条件の目安)
上場企業の社員。年収1000万円以上。自己資金率20%以上。
提携金融機関で不動産投資ローンを組む
上記で見てきたように「不動産投資ローン」をメガバンク、大手銀行、地方銀行、信用金庫で組むことは可能ですが、「不動産投資ローン」に積極的な金融機関は限られています。
自分で一から金融機関を探して「不動産投資ローン」を組むことも不可能ではありませんが、一般的には収益用不動産を販売する不動産会社が提携する金融機関のローンから選ぶことが現実的で実際にももっとも多くなります。
不動産投資ローン借入れまでの流れ
「不動産投資ローン」を組むことを予定している方は、借入れまでの流れを把握しておくと安心です。書類を揃える準備段階も必要になります。契約がスムーズに進められるよう借入れまでの流れを確認しておきます。
(1)「不動産投資ローン」審査の申込み準備をする
ローン審査の申込み前の段階で、提出する必要がある書類を全て揃えておくと契約までの流れがスムーズになります。主な提出書類は以下になります。金融機関によって異なることもあるため、事前に確認して準備をしておくと良いと思います。
[必要書類(例)]
身分証明書(運転免許証や保険証など)
住民票
印鑑証明書と実印
給与明細(3か月分)
源泉徴収票(給与所得がある場合、3か月分)
確定申告書(自営業や副収入がある場合、3か月分)
保有資産を証明する書類
返済予定表
納税証明書(3か月分)
書類を揃えて融資を受けようとしている金融機関に融資の事前審査(仮審査)の申込みをします。「不動産投資ローン」の融資では、本審査の前に事前審査を行い融資実行が可能かどうか調査して、融資の可否および融資額や金利などが決められます。
(2)「不動産投資ローン」審査の申込みをする
金融機関の担当者による借入者(投資家)の属性や物件の確認が終わると、事前審査の申込みの可否が知らされます。可能と判断されたら、本格的な申込みに進みます。連絡が来るまでの期間は、早ければ数日程度、遅い場合は数週間かかります。この段階で、申込み書や必要書類の提出を求められることもあります。審査に通れば、詳しい契約内容が告げられます。
融資の事前審査が通ったら物件の購入申込みをして、売買契約の締結を行います。
売買契約の際は、融資の審査が通らなかった場合に白紙解除ができる「ローン特約」が契約に盛り込まれているか確認しておきましょう。
(3)融資手続きを行う
審査に通ると、融資に関する手続きに移ります。一般的な契約内容は以下の通りです。
手続きを行う場所や必要書類について事前に確認しておきましょう。
[契約内容]
金銭消費貸借契約(金消契約)=ローン契約(返済計画や設定金利などが契約書に記載されています)
抵当権設定契約
根抵当権設定契約
団体信用生命保険
以上の手続きを終えて「不動産投資ローン」の融資実行を受けると、投資用物件の購入が可能になります。物件を購入すると、所有権移転登記とともに物件に金融機関の抵当権設定登記が行われます。融資が適用されていないといったトラブルがないよう、決済日の確認も重要です。購入後はローン契約内容に従って返済をします。